ミルクティーの音色


2


「じゃあ、また明日。待ってる」

『はい。また明日』


電話を切ると、自分でも気持ち悪いくらいにやけているのが分かった。
早めに仕事を終え、マンションに向かう帰り道。
ふと佐々木さんの声が聞きたくなり、勢いのまま電話をかけてしまった。


迷惑かと思ったが、電話越しに聞こえる佐々木さんの声は嬉しそうだった。


「誰とお電話ですか?」


びくっと身体を震わせながら振り向くと、興味津々な表情をした町田先生が立っていた。
もしや、聞かれていた?


「びっくりしました、後ろにいたなら声かけてくださいよ」

「わたしもそうしようとは思ったんですけど、誰かと電話中だったので。待ってるって言ってましたよね、彼女さんとかですか?」


この場合、なんて返すのが正解なのだろうか。
佐々木さんと俺は恋人同士であって、電話をしていたのは彼女になるはず。
でもお互いに誰にも言わないようにと決めたのだ。
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