ミルクティーの音色
「町田先生、どこから聞いてました?」

「電話の話ですか?わたしが聞こえたのは最後の待ってるって所だけです」


ほっと胸をなで下ろした。
佐々木さん、なんて言っているのが聞かれたら大問題だ。


「そうだ、渋谷先生、良かったら飲みに行きません?」

「え、飲みにですか」

「予定あったり、お酒苦手とかだったら大丈夫です。どうです?」


この後の予定は特になかったはず。
お酒も苦手ではない。むしろ好きだ。


そうは言っても、女の人と一対一で飲むなんて。
俺は恋人がいる身だ。
独り身の時なら気兼ねなく快諾できただろうけど、今は違う。


「ごめんなさい、急なお誘いでしたよね」

「いえ。予定あったかなって、思ってただけなので。大丈夫です」

「じゃあ、飲み行きますか?」

「ですね」


太陽が半分以上沈んでしまった空の下、俺と町田先生は並んで歩き出す。


「渋谷先生、行きつけの居酒屋とかバーとかあります?」
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