ミルクティーの音色
「町田先生、酔ってますか?」

「酔ってないでぇす、らいじょぶ」


もう呂律が回っていない。
今日はこの辺りで引き上げた方が良さそうだ。


「ちょっとここにいてください、会計してきます」

「はぁい」


町田先生はもう机に突っ伏してしまった。
ちらちらと町田先生を見つつ会計を済ませ、戻ると肩をぽんぽんと叩いた。


「町田先生、帰りますよ。ほら、起きて」

「寝てないです、大丈夫ですよぉ」


町田先生を抱えるようにしながら店を出た。
足取りはふらついていて危ない。どうやって家に帰そうか。


「お家どっちですか。いつも何で帰ってます?電車とかバスとか」

「家あっちです、いつもはぁ、電車で帰ってます」


俺が住むマンションとは方向が反対のようだ。
となるとここで別れることになる。


町田先生は電車なのか。
腕に巻き付いた時計盤を確認すれば、ぎりぎり終電には間に合う時間だった。
とはいえ、泥酔した町田先生をひとりで行かせて大丈夫だろうか。


「町田先生、ひとりで帰れますか?」

「大丈夫ですよぉ、いつもひとりで帰ってますし」
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