ミルクティーの音色
町田先生の手首から、爽やかな柑橘系の香水が香る。
その香りが余計に、俺の感覚を鈍らせる。


お互いを支え合うようにして歩いた夜道、空には星がひとつも浮かんでいなかった。







「本当にごめんなさい!」


朝職員室に入るなり、先に来ていた町田先生に言われた。
きっかり九十度のような姿勢で頭を下げられ、俺はどうしたらいいのか分からず困惑している。


「町田先生、大丈夫ですから、頭を上げてください」

「でも、ご迷惑をおかけしましたし」


周りの先生からの視線が痛い。
何があったんだと訝しげに俺達を見ている。


「ちょっとここだとあれなので、移動しましょう」

「え?あ、そうですね」


職員室を出て、近くの会議室に入った。
誰かが入ってくると怪しまれかねないから、鍵もかけて。


「ごめんなさい、本当。今も周りのこと全く気にしないで」

「いやいやそんな、謝らないでください。お酒のトラブルなんてよくあることですし」
< 90 / 214 >

この作品をシェア

pagetop