ミルクティーの音色
町田先生は未だ項垂れ、ごめんなさいと謝罪の言葉を並べ続けている。


「俺も正直、あんま記憶ないんです。店出て、一緒に歩き出したところまでは覚えてるんですけど」

「確かその後、結果的に駅で別れたと思います。少しずつ酔いが覚めて、意識がはっきりしてきたので」

「あー、そんな気がしてきました。大丈夫ですよね、俺家とか上がってないですよね」

「その点は大丈夫です。現に先生、ちゃんと自分の家から来てますよね?」


よかった。
ないとは思うだろうけれど、もし酔った勢いで部屋に上がり込んだりでもしていたら、今度こそ佐々木さんに合わせる顔がなくなる。


「まぁとにかく、昨日のことは誰にも言わないようにしておきましょう。変な噂が立つといやなので」

「そうですね。というか渋谷先生、彼女さんいるんじゃ」

「大丈夫です。きっと。やさしい人なので」


本当にごめんなさい、と町田先生がもう一度頭を下げた。
謝られてばかりも気が滅入るので、この件はもう終わりにしましょうと言ってふたりで会議室を出た。
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