ミルクティーの音色
大きくて男らしいと言われる手だけど、張り合う相手が空ともなると流石に負けて小さく見える。


隣に立っていた佐々木さんがバランスを崩して倒れそうになった。
それを抱きかかえて支える。


「大丈夫?」

「もうちょっと、このまま」


弱々しい力が、俺の腕を必死に掴んでくる。
熱でもあるのかと思って頬に触れても、あまり熱さは感じられない。


「佐々木さん、体調でも悪い?」

「なんでですか」

「いや、こんな風に甘えてくるの珍しいなって。いつも振り払おうとするじゃん」

「好きな人に甘えたいって思うのは、だめなんですか」


だめじゃない。全然。
昂ぶる気持ちを抑えるべく、下唇を噛みながら天を仰いだ。
佐々木さんの顔が肩に乗って、息がかかる。


どんな表情をしているかは分からないけど、きっと幸せそうな顔をしているんだろう。
ずっとこうしていたい気持ちを抑え、ゆっくりと身体を離した。


「ごめんなさい、学校なのに」
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