ミルクティーの音色
「いいよ。教室いないって聞いたときはびっくりしたけど、体調悪いとかじゃないんでしょ?」

「はい。久しぶりに、ここに来たくなっちゃって。かれこれ一ヶ月くらい来てなかったんです」

「そっか。そろそろ戻る?」


佐々木さんが名残惜しそうな表情を浮かべる。
ちらりと時間を確認すれば、授業の開始時間まではあと二十分ほどあった。


「やっぱ、もうちょっとここにいよっか。五分くらいだよ?」


花が咲いたように笑い、こくりと頷く。
設置されているベンチにふたりで腰掛けた。


「わ、先生。見てくださいあの雲」


佐々木さんが指差す先を見ると、ほうきで掃いた後のような形をした雲があった。
薄くて、白くて、輝いている雲。


この雲は巻雲と呼ばれ、他にもすじ雲やしらす雲とも呼ばれるらしい。
氷の粒で出来ており、空の最も高い位置に発生するんだとか。


佐々木さんは自慢気に雲の知識を教えてくれた。
どうしてそんなに知ってるの、と聞いたら過去に関心があって調べたそうだ。
< 95 / 214 >

この作品をシェア

pagetop