ミルクティーの音色
「渋谷先生、佐々木さん!こんなところにいたんですね」

「町田先生」


屋上に来たのは町田先生だった。
俺たちがいるベンチの方に駆け寄ってくる。


「佐々木さん、また勝手に抜け出したの?どうして?嫌なことでもあった?」

「その、えっと」

「町田先生」


自分でも驚くほど、冷たい声が出た。
佐々木さんに触れて欲しくないという、醜い独占欲からきているのだろうか。


「そろそろ授業が始まります。話は後にして、まずは教室に戻りませんか」

「そう、ですね。すいません。佐々木さん、次の授業何?」

「次は確か、数学だったかと」

「数学ね。渋谷先生、教室まで送ってあげてください。わたし授業の準備があるので」

「了解です。行こっか」


先に屋上を後にした町田先生に続いて、俺たちも熱気がこもった校舎へと戻った。
階段を下りながら、佐々木さんの雰囲気がいつもと違うと思った。


雰囲気というか、身に纏っている空気というか。
俺の語彙力では上手く説明できないけれど、確実に違う。
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