Re:Lily
私が言えたことじゃないね。


「那樹は変わったようで、変わってないね」

私の冷えきった声が、無機質なこの病室へ響く。
私の涙はもう止まってしまった。


「…みやびは、変わったの?」


頭を上げて、ボロボロに泣いて化粧もぐちゃぐちゃの顔で那樹は私の方を見上げるように向く。





「変わったよ」




自分でも驚くくらい低い声。冷酷。
私って、こんなに性格が悪くて、好きな人をそんな顔にさせてしまう人だったんだ。

私のその低すぎるトーンに、目の前の那樹の涙も止まる。
思考が停止したように、その場に固まって那樹は何も言ってこない。


那樹は決して悪くない。


だから、あなたはこれからどんどん、


早く私から離れて…




「助けてくれてありがとう。…もうここには来ないで。」




那樹は顔を下に向けて、私に見せないようにして、ゆっくりと立ち上がり、たった数メートルの病室のドアまでゆっくりと歩いていく。

その姿を私も決して見たりしない。


「みやび…」


ドアの取っ手に、那樹の手が触れてガタッと音がする。
ドアを開けたんだろう。



「また…」




たった2文字。

那樹はそれだけ言って、病室から出ていった。
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