Re:Lily
那樹は私と目が合うと、ニコッと笑った。

「好きとかどうでも良い。ただみやびと、笑っていられたらそれだけで良い!」

那樹はそう言ってカクテルを一口飲んだ。
そして、ひと呼吸おき言葉を続ける。


「みやびのこと、忘れたことなんて無かった。1度も。」


真っ直ぐすぎる瞳で私を見ている。
その純粋無垢な眼差しに、私は目線を逸らせなかった。

それは今にも吸い込まれてしまいそうで、私はなんとか我に返り、平然を装う。



「みやび、私たち、…また友達に戻れないのかな」




なんと答えればいいんだろう。

突き放したのに、それでも私に歩み寄ってくる目の前のこの人が不思議でならない。


「みやびはさ、いつも弱ってるところとか、絶対見せなかったよね。」



そうだね。

あの頃の私は、強かったよ。
自信に満ち溢れてて、自分で言うのもなんだけど努力家で、何事にも一生懸命で。


「私はそんなみやびに、憧れてたんだ。」


過去形。

今はまるで立場が逆転したみたいだ。

あのライブハウスで見た那樹の姿。
目に焼き付いて離れない。


「ねぇ、何があったの。」


私がテーブルの上に何となく置いていた手の上に、那樹の手が重なる。



「私はあの頃の私じゃない。」



そう言うと、重なっていた手に那樹のもう片方の手も重なる。
そして、那樹は少しクスッと笑った。
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