Re:Lily

「ごめんね、…やっぱり寝たか。」

「店長、那樹がお酒弱いの…」

「おせっかいだったら謝る。」


お店が落ち着くと、私たちの方へ店長がきた。
那樹は相当お酒に弱いみたい。


「どうしても君と話したいって言って、お酒の力でって…はぁ」

「自分が飲まれてますね」


私はそこでもう一杯、店長のお言葉に甘えていただくことにした。
那樹は起きそうにもない。


都会から離れた地元のバーだ。
ラストオーダーの時間も早く、店内からお客さんがいなくなっていく。




「まだ起きないか。」

「すみません、またいただいてしまって」

「全然、気にしないで。」


店長さんはさっきまで那樹が座っていた向かいのソファ席に腰を下ろした。


「いきなり観客席に飛び降りて、ライブハウス出て行ったってきいて、本当に那樹がそんなことするのかって…思ったよ」


そっか。
そうじゃなきゃ、あのタイミングで那樹が私のところに来るはずなんてないんだ。


「あんな人混みで、よく見つけられましたね」

「…名前、みやび、であってたよね?」

「はい、そうですが。」


店長さんは私の名前を確認して、ひと呼吸おくと、那樹の寝顔を我が子かのように見つめ、その後私の目を見る。

まるで那樹と何かを確認したかのように。

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