太陽みたいなキミだから
1. ひまわりとキミ
本当は、ずっと前から知ってたんだ。
誰からも必要とされていないってこと。
◇
窓から差し込む夕日が、手にした一枚の紙を照らす。
このモノクロの世界で、まるでスポットライトに当たったかのように、右上の「92」だけが存在感を示していた。
こんなものを見られたら、なにを言われるかわかったもんじゃない。
目を閉じ、深呼吸をして、再び目を開ける。
だからといって、魔法みたいに数字が変わることはない。
わかりきったことだけど、思わずため息が漏れる。
「めーいっ! もうとっくにチャイム鳴ったよ?」
後ろからにゅっと手が伸びてきたかと思うと、視界から紙がなくなった。
とられた! と思った時にはもう手遅れで。
「ひゃー、数学九十二点って天才? てか人間?」
「さっすが学年一位サマは違うねー」
うしろを振り返ると、紗枝と美優が立っていた。
『ズッ友』と書かれた、揃いのキーホルダーがついたスクールバッグを肩にかけ、わたしの紙――テスト用紙をニヤニヤしながら見つめている。
「そう、かな……。ね、もういいでしょ」
曖昧に笑いながら紗枝の手からテスト用紙を取り返すと、二人は同時に 「ええーっ」と不満を口にした。
「いいじゃん、減るもんでもないしぃ」
「そーそー。わたしなんて七十点しかとれなかったんだよ?」
「もーっ、芽衣に勉強教えてほしいくらい!」と嘆く美優に対し、紗枝はそんな彼女の頭を大袈裟に撫でた。
わたしはその様子を冷めた目で眺める。
紗枝も美優も、いつも「教えてほしい」と言うけれど、本当に「教えて」と言ってきたことは一度もない。
「いいなぁ芽衣は。このままいけば県内一のS高もヨユーじゃん」
「え」
「『え』って……進路希望調査、当然S高で出したんでしょ?」
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