太陽みたいなキミだから

1. ひまわりとキミ


本当は、ずっと前から知ってたんだ。
誰からも必要とされていないってこと。











 窓から差し込む夕日が、手にした一枚の紙を照らす。
 このモノクロの世界で、まるでスポットライトに当たったかのように、右上の「92」だけが存在感を示していた。

 こんなものを見られたら、なにを言われるかわかったもんじゃない。
 目を閉じ、深呼吸をして、再び目を開ける。
 だからといって、魔法みたいに数字が変わることはない。
 わかりきったことだけど、思わずため息が漏れる。

「めーいっ! もうとっくにチャイム鳴ったよ?」

 後ろからにゅっと手が伸びてきたかと思うと、視界から紙がなくなった。
 とられた! と思った時にはもう手遅れで。

「ひゃー、数学九十二点って天才? てか人間?」

「さっすが学年一位サマは違うねー」

 うしろを振り返ると、紗枝(さえ)美優(みゆう)が立っていた。
 『ズッ友』と書かれた、揃いのキーホルダーがついたスクールバッグを肩にかけ、わたしの紙――テスト用紙をニヤニヤしながら見つめている。

「そう、かな……。ね、もういいでしょ」

 曖昧に笑いながら紗枝の手からテスト用紙を取り返すと、二人は同時に 「ええーっ」と不満を口にした。

「いいじゃん、減るもんでもないしぃ」

「そーそー。わたしなんて七十点しかとれなかったんだよ?」

 「もーっ、芽衣(めい)に勉強教えてほしいくらい!」と嘆く美優に対し、紗枝はそんな彼女の頭を大袈裟に撫でた。
 わたしはその様子を冷めた目で眺める。
 紗枝も美優も、いつも「教えてほしい」と言うけれど、本当に「教えて」と言ってきたことは一度もない。

「いいなぁ芽衣は。このままいけば県内一のS高もヨユーじゃん」

「え」

「『え』って……進路希望調査、当然S高で出したんでしょ?」
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