太陽みたいなキミだから
 あの絵がひまわりだと言い当ててくれたみたいに、慰めてもらおうとした? ……まさか。
 気まずさに視線をウロウロさせると、楽しそうに笑うエージ先輩と目が合った。
 この人は、一体何がそんなに楽しいのか。

「っ……エージ先輩って何組なんですか? なんでいつも屋上にいるんですか?」

 目を逸らしながらとっさに出た言葉。でも我ながらいい質問だと思う。
 知っているのは名前だけ。わたしにとってエージ先輩は、突然現れて、突然「絵を描いて」って言ってきた謎の人だ。

 だけどエージ先輩は人差し指を唇にあてて

「ひみつ」

 そう言ってまたクスクス笑った。
 ひみつって、なに。
 バカにされたように感じ、眉をひそめる。

「もういいです」

「あっ、怒らないで。そうだな……オレのことを知りたいなら、先に芽衣のことを教えてよ」

 わたしのこと……って。
 さっきまでムクムクと沸いていた先輩への興味が、どんどんしぼんでいく。

「……先輩のこと言いたくないなら、もう聞きません」

「なんでそうなるの」

 先輩の見開いた大きな目がわたしを不思議そうに見つめる。

「だって……」

 だって、誰もわたしに興味なんてない。
 部活を辞めたことも忘れて自分たちの話しかしない友達に、どんな時も「兄」が一番でわたしを見てくれないお母さん。
 友達も親さえもわたしに興味がないのに、昨日会ったばかりの他人がわたしに興味があるはずがない。
 その場のノリで「教えて」なんて、言われたくはなかった。

 そんな思いを見透かしたように、エージ先輩がゆっくり目を細めた。

「オレは芽衣に興味があるよ。どんな時に笑うのか、どんな時に悲しむのか、どんな時に怒るのか」

 なに、それ……。
 そんなこと、言われたことない。本気? でも、ウソかもしれない。よく……わからない。

「なんで……」

「芽衣に一目惚れしたから、かな?」

「はぁ……?」
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