太陽みたいなキミだから

3. 正反対

「――ということで、あとは各クラスにこの話を持ち帰ってもらって……――」

 頭がぐらりぐらりと揺れる。いけない、と思いつつ前に倒れこまないようにするのがやっと。
 瞼はどんどん重くなり、目を開けていられなくなってきた。

「――なので、この用紙を……――」

 実行委員長が説明してくれているのに……だめだ、全然話が頭に入ってこない。
 太ももをぎゅーっと強くつねり、なんとか意識を保つ。

 昼休み、文化祭実行委員の話し合いの最中。わたしは迫りくる睡魔と戦っていた。

 ――こんなはずじゃなかったのに。

 授業中だって一度も寝たことはない、どちらかといえば真面目な人間。
 それがなんでこんなことになっているかというと、思い当たるふしは一つしかない。――塾だ。

 お母さんが申し込んだ塾というのがやっかいで、ふつうの塾とはちょっとちがう。
 医学部専門塾といって、その名の通り、将来医学部に行きたい人が通う塾だった。当然カリキュラムも特殊で、今まで学校の勉強しかしてこなかったわたしにはなにもかもが未知の世界。
 授業にもついていけるはずもなく、毎日、夜遅くまで宿題をこなす日々だった。

 やっぱりわたしはお兄ちゃんとはちがう。
 小さい頃からなんでもできたお兄ちゃん。運動も、勉強も、同じ年の子よりずっとずっと上達が速かった。
 近所の人からも『神童』なんて呼ばれて、でも、それを鼻にかけることもしないで。
 そんなお兄ちゃんとわたし、当たり前のように比べられて過ごしてきた。
 なにをやっても「ふつう」。才能がないから努力するしかないわたし。
 今回だってそうだ。お兄ちゃんはこんな塾に通わなくたって医学部に進学した。
 それなのにわたしは……塾に入ってもついていくことさえできない。
 
 

 
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