太陽みたいなキミだから
 息を吐いて肩を落とす。
 コンクリートの地面に映る雲の影をぼんやり眺めていたら、頭上から「ふふっ」と笑い声がした。
 顔をあげると、エージ先輩が目を細めてわたしを見ていた。まるで愛しい人を見るような眼差しに、思わずドキッとする。
 なんでそんなに幸せそうな表情(かお)をしているの。

「……なにがそんなに楽しいんですか」

 エージ先輩は「んー?」と首を傾げると、そのままわたしにグッと近づいてくる。
 先輩のオレンジ色の前髪が、目の前でふわりと揺れる。息すら届いてしまいそうな距離に、わたしの心臓はどくんと跳ねた。

「芽衣が自分のこと話してくれるから」

「……っ!」

 ちょっぴり掠れた低い声。わたしより大きな手は骨ばっている。……男の子、なんだな。
 当たり前のことを今さら実感した。

 意識したらもうダメで。
 体がカーッと熱くなってくらくらしてきた。男の子とこんなに近づくことって今までなかったから。
 先輩、距離感バグってます。

「……ていうかっ……暑くないんですか」

 この体制から逃げ出したい。それは、そんな思いから咄嗟に飛び出た言葉だった。

「え?」

 きょとんとするエージ先輩。そのすきに、わたしは二歩ほど後退る。
 暦は六月――衣替えの季節に入ったのに、エージ先輩はいまだに長袖のシャツを着ていた。
 ずっと不思議だったんだ。なんで衣替えしないんだろうって。

 すぐに返事が返ってくると思ったら、エージ先輩は不思議そうな顔で自分の両腕をじっと見ている。
 だけどやがてパッと顔を上げると、
 
「オレ、寒がりだから」

 そう言ってニコッと笑った。

「は……はぁ」
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