太陽みたいなキミだから


「そこだ、そこ……いけっ!」

 結局昨日は、塾に早めに行くことでなんとかなった。
 何個も質問をするわたしに、『わからなかったら、無理してやってこなくていいですよ』と言った、先生の憐れんだ目が忘れられない。
 遠回しに『あなたには向いてない』と言ったんだと思う。
 そんなことわかっているけど……やめるわけにはいかなかった。
 勉強ですら見放されたら、もう本当に、わたしにはなにも残らなくなってしまうから。

「ああー……惜しい!」

 爽やかな風が吹く中、となりのこの人(エージ先輩)はサッカー部の応援に夢中だ。
 二チームに分かれて練習試合をしているんだけど、エージ先輩はどっちともを応援しているから、ひっきりなしに「行け」だの「違う」だの叫んで忙しないったらない。
 しまいにはフェンスから身を乗り出すもんだから、落ちちゃうんじゃないかと見ているこっちがハラハラしてしまう。
 わたしがこんなに思い悩んでいるのに、なんにも知らないとはいえ能天気なんだから。

「……サッカー、好きなんですか?」

 じとっと見ると、エージ先輩はグラウンドから視線を外し、わたしに向き直った。
 
「うん、大好き!」

 満開のひまわりみたいな特大笑顔。大好き、の言葉についついドキッとしてしまう。
 わたしに言ってるわけじゃないことくらい、わかってるけど……。

 大好きなら、こんなところで時間をつぶしてないで、サッカー部に入ればよかったのに。
 ふいにそんな言葉が浮かんだけど、口には出さない。
 どうせ言ったところでいつもみたいにはぐらかされるだけだからだ。


< 27 / 95 >

この作品をシェア

pagetop