太陽みたいなキミだから
「ほどほどにしたら? 眠いのってキツイじゃん」

 軽い調子で返されるから、悩んでいるのがバカらしくなる。でも。

「そんなわけにはいかないんです」

 眠いから、できないから、「じゃあ宿題やりませーん」なんて言えない。
 これはわたしの意地でもあった。だってここで頑張らなきゃ、絵を諦めた意味がない。

「……ふーん」

 珍しくきゅっと眉を寄せて考え込むようなしぐさを見せるから、今度こそ説教かなにかが降ってくるのかなと思った、だけど――。

「あっ、そういえばさ、調べてきたよ!」

 パッと顔を上げた先輩の顔は驚くほど楽しそうで。
 よくわからない言葉が返ってきてずっこけそうになる。
 えっと、今のでこの話は終わり? やっぱりわたしに興味なんてないんだ。
 ちょっぴり不満そうに「なにをですか」と聞いてみる。するとエージ先輩はよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりにニッと笑った。

「ヒグチさんのこと!」

「え……?」

「芽衣、ヒグチさんのこと知りたがってたでしょ?」

 曇りのないまっすぐな瞳。
 たしかに樋口さんのことは気になってはいる。だけど調べてきたって……どういうこと?
 黙っているわたしをしり目に、エージ先輩が口を開いた。

「樋口とも。二年三組。血液型はB型で八月生まれのしし座。家族構成は母、父、弟。部活には入ってない。友達はいないね。どちらかというと周りから浮いているみたい。いつも教室で本を読んでいるか寝ているかの二択。趣味は――」

「あの、ちょっと待ってください」

 先輩の口元に向かってずいっと手を突き出した。急にわたしが止めるから、エージ先輩はきょとんとしている。

「え、なに、どうしたの?」

「調べてきたって……今の情報を?」

「そうだけど?」
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