太陽みたいなキミだから
 先輩はなにが悪かったのか全くわかっていないみたいだ。
 わたしが知りたいのは、樋口さんがどういう考えで行動しているか……つまり「内面」のことで、家族構成とか教室でなにをしているか……みたいな極めて個人的な情報じゃないのに。

「たしかに気になるとは言いましたよ? でも知りたいのってそういうことじゃないっていうか……ちょっとキモチワルイっていうか……」

 『キモチワルイ』
 そう言われたのがよっぽどショックだったらしい。いつも笑顔のエージ先輩が珍しくうなだれている。

「芽衣のためになにかしてあげたくてオレなりに調べたんだけど、き、キモチワルイって……」

「いえ、あの、気持ちはうれしいんですけど……」

 うるんだ目でわたしを見つめてくる。その姿はまるで捨てられた子犬のようで、見ていると胸が痛んだ。
 ず、ずるい。

「……あの、趣味、は……なんだったんですか?」

 これ以上責める気にはなれず、さっきの報告レポート(・・・・・・)の続きを促した。
 そのとたん、エージ先輩はパッと顔を輝かせる。

「それはね、ひ・み・つ」

「は……はぁ⁉」

「あはっ、だってこの先は実際に見てもらった方がわかると思うし」

「途中まで言われたら気になるじゃないですか」

「気になるんだーそっかー、オレの調べたことが気になるんだー」

「……っ!」

 なに、この人!
 エージ先輩、さっきわたしが言った「キモチワルイ」を相当根に持っているにちがいない。
 べ、と舌を出して、いたずらっぽく笑っている先輩を見て、そう思った。
 なんていうか……やっぱりエージ先輩はちょっと変な人で……意地悪だ。

「もういいです」

「あはは、怒らないでよ。ね、芽衣、デートしない?」
< 30 / 95 >

この作品をシェア

pagetop