太陽みたいなキミだから

5. 兆し

 ――なんでわたし、来ちゃったんだろう。

 約束の土曜日。
 朝の天気予報は「真夏日」。その予報通り、一歩外に出ると太陽がぎらぎらと照り付けていた。
 道行く人も汗をぬぐったり、手で顔をあおいだり、暑そうにうんざり歩いている。
 そんな中わたしは……――約束の駅前に来ていた。
 
 エージ先輩はわたしをからかっている。真に受ける方がバカ。そんなの、わかっているはずなのに……。
 だけど、つい、きょろきょろとエージ先輩の姿を探してしまうわたしがいる。

 ――まだ来てない。

 こんなんじゃ、わたしの方が楽しみにしていたみたいじゃないか。そんなんじゃないのに。
 ため息混じりにワンピースの裾をつまんだ。
 駅前でたむろしている女の子たちはみんなカラフルで派手な恰好だけど、わたしはそんな服持っていない。
 わたしが着ている、ネイビーと白のチェック柄のワンピース。
 一度だけ、紗枝と美優と三人で買い物をしたときに買ったものだった。
 『今度遊ぶときにそれを着て来てよ』二人にそう言われたのに、その『今度』がやってくることはなかった。

 ハーッとため息をつき、ぼんやり街並みを眺める。
 外出自体、久しぶりだった。
 以前はどこに行っても色彩が溢れてワクワクしたのに、「描かない」と決めたときから、なにもかもがつまらない景色になった。

 正面に見える時計台を見上げる。約束の二時はとっくに過ぎていた。
 ……だまされたのかな。
 だとしてもなにも不思議じゃない。エージ先輩は明るくて、悩みもなさそうで、みんなに好かれているんだろうから。
 よりにもよって、わたしなんかとわざわざデートする理由はなかった。
 
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