太陽みたいなキミだから
 人気のない階段を一段一段ゆっくり上る。ここ、東棟一番奥の階段は、埃っぽくて静かだ。
 理科室と美術室しかないので、関係のない生徒はふだん近づかない。

 四階に着くと、美術室の前まで迷いなく進み、廊下にもう長いこと貼ってある絵を乱暴に引き剥がした。
 ちょうど日光がよく当たる場所だったからか、日焼けして壁の色がそこだけ変わってしまった。
 でもきっと、この絵が一枚なくなったところで、誰も気づかない。
 今だって、美術室には部員がいるはずなのに、みんな自分のことに一生懸命で廊下にいるわたしのことなんて気にする人はいないんだから。

 そういうものなんだ。
 わたしの存在も、この絵と同じ。
 なくなったところで誰にも気づいてもらえない。

 右手に絵をしっかりと持ち、くるりと引き返して階段を見上げた。
 四階の上――屋上へと続く階段は、黄色と黒の禍々しいしま模様のテープで塞がれていた。

『屋上には絶対に出てはいけません』

 いつかの朝礼で先生が言っていた言葉。
 なんでも、フェンスの調子が悪いとかで危ないからだそう。
 でも、こんな風に装飾されると、逆に入ってみたくなるのはわたしだけだろうか。

 侵入禁止のテープは、本当に侵入を禁止(・・・・・)させたいのかわからないほど頼りないものだった。
 片足を少し上げれば簡単に越えられてしまう。
 わたしは軽々とそれを越えると、屋上へと続くドアに手をかけた。
 意外にも鍵はかかっておらず、ドアは簡単に開いた。
 
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