太陽みたいなキミだから
 胸の奥がじーんと熱くなる。それになんだかくすぐったい。
 わたしのことを知りたいなんて、そんな風に思ってくれる人、今までいなかったから。
 うれしい、うれしい、うれしい。わたし……うれしいんだ。

「……絵は」

 いつの間にかエージ先輩は笑うのをやめ、真剣な目でわたしを見ていた。
 ドキンと心臓が跳ねる。

「えっ……」

「……絵は……もう、描かないの?」

 慎重につむがれた言葉。いつもの軽口じゃないことはわかる。
 ごまかしちゃいけない、そう思った。

「描きません」

 もう何度目かわからない言葉を口にする。口にすることで、その覚悟を確かなものにしたいのかもしれない。
 描かない。描きたいと思っちゃいけない(・・・・・・・・・・・・・)

 その瞬間、エージ先輩がきゅっと唇を結んだ気がした。
 だけど気のせいだったのか、次の瞬間には困ったように微笑んでいる。

「なんで。もったいない」

 絵の欠片しか見てないくせに、適当なこと言って……。
 さっきまで真剣な空気だったのに、急に茶化されたみたいで冷める。
 わたしはソフトクリームの最後の一口を一気に口に運んだ。

「……欠片しか見たことないじゃないですか」

「欠片だったけど、ちゃんとひまわりだったよ。色使いが生き生きとしてて、生命力に溢れてて、それでいて――」

 ハッとして目を見開いた。スプーンを持つ手がピタリと止まる。

「わーっ!! やめ、やめてくださいっ!!」

 自分の描いた絵をほめられたことなんて今まで一度もない。お母さんはもちろん、先生にだって。
 それが今……ほめられた。ほめられた……よね?
 なんだろう、この感覚。ふわふわして……夢みたいだ。
 体温が一度ほど上がったみたいに、体が熱をもっている。

 手が小刻みに震えていることに気付いて、わたしはそっと両手を握った。

 
 
 

 
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