太陽みたいなキミだから

6. 嫉妬と憧れ

 ゲーセンを出たら、来たときよりいくらか日差しが和らいでいた。夕方三時をまわったところ。日が落ちるまではまだ時間がある。
 今日はこれからどうするんだろう。もうこれで終わり……?
 そう考えてハッとした。はじめは「なんで来ちゃったんだろう」なんて思っていたのに、いつの間にか名残惜しくなっているんだ。
 
「…………」

 先輩はさっきから無言で歩いている。
 「帰ろうか」と言われるのが怖くて「どこに向かってるんですか」なんて聞けない。
 エージ先輩はどう思ってるんだろう。背中に視線を投げかけるけど、答えてはくれない。
 そうやってしばらく歩いていたら、ある場所で先輩の足がピタリと止まった。

 そこはなんてことない路地だった。駅から少し離れたから、人自体はそんなにいない。
 道路沿いにちらほらとお店らしきものが見えるけど……でかでかとドクロが描かれた壁だったり、どぎついピンクの建物だったり、どれも中学生に似つかわしくない。

 本当に、こんなところに用事が……?
 訝し気に先輩を見上げると、視線に気づいた先輩が「ほら、あれ」と言って前方を指さした。
 あれ? あれって……。

 その先には、一人の女の子がいた。
 夕焼け色の膝丈ワンピース。足元はゴツい黒いサンダルで、シアー素材の柔らかい雲みたいな靴下をはいている。
 目元にはキラキラとラインストーンが輝き、ワンピースと同じく、長い髪も夕焼け色に染まっていた。
 派手な女の子だ。だけどその服装が彼女にすごく似合っている。

 わたしにこんな派手な友達はいないはず。でも、どこかで見たことあるような……?
 じっと目を凝らして見ていると、その女の子が近づいてきた。

「杉咲さん?」

 その声には聞き覚えがあった。
 まさか……。

「ひ、樋口さん……?」

 半信半疑。いや、できれば違っていてほしい。
 そんな気持ちで聞いてみると、目の前の女の子は無表情のままコクリと頷いた。
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