太陽みたいなキミだから
「わたし、服飾専門学校に行きたいんだ。デザイナーになりたいの」

 服飾専門学校――それは、珍しい進路。「美術科のある高校」に行きたいと思っていたわたしと被る。……でも。

「……反対されなかった?」

 ――もし。もしわたしがお母さんに「美術科のある高校に行きたい」と言ったら……。
 お母さんのことだ、発狂して家の中がぐちゃぐちゃになりかねない。
 樋口さんは「うーん」と首をひねり、少しだけ考える素振りを見せた。そして。

「反対はされたけど、わたしの人生だから」

 きっぱりと、あの日と同じ口調でそう言った。

「好きな服を着るし、好きなように生きる。誰にも文句なんて言わせないから」

 瞳はきらきら輝いている。でも夢見るようなふわふわした感じじゃない。
 現実だ。樋口さんにとって「夢」は「現実」なんだ。

「……うらやましい」

 意識せずとも漏れ出た言葉。今まで樋口さんを見て、何度も隠したいと思っていた気持ちだった。
 うらやましい、彼女が。自分の気持ちにまっすぐに生きられる彼女が……とても。
 樋口さんは怪訝そうな表情でわたしを見た。

「杉咲さんも、そうすれば」

 あまりにもあっけらかんと言うから、一瞬なにを言ったのか考えてしまった。
 「そうすれば」って簡単に言うけど、樋口さんみたいに生きるのはそう簡単なことじゃない。

「でも……」

「なんで?」

 なんでって……それは。
 親の言う通り医者になろうとしている理由。本音を言わない『いい子』になっている理由。


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