太陽みたいなキミだから
 ……怖いんだ。お母さんに、友達に、嫌われるのが怖い。
 ただでさえ代わりがいる身(・・・・・・・)なのに、自分を出して嫌われたくはなかった。
 だから医者になりたくなくても、お母さんの言うことを聞いて志望校を変えた。絵を諦める選択をした。
 友人たちと心の距離があるのに、笑ってごまかした。

 そうすれば、こんなわたしでも必要とされると思っていた。
 代わりじゃなくて、「わたし」として見てくれると、本気で思っていたんだ。

 『杉咲さんも、そうすれば』と言える樋口さんは、強い。あまりにも強くて、わたしには真似できない。
 心にスッと光が差し込む。でもその光は、今まで浴びたことのない光だった。
 鋭くて、あまりにも眩しくて……痛い。

「わたし、そろそろ行かなくちゃ」

 くるりと背中を向ける樋口さん。いけない、話している途中だったのに、ついぼんやりしてしまった。

「……ごめん、ありがとう!」

 その背中に叫んでみても、彼女は振り返らない。でもそれが彼女らしくもある。
 わたしは口に添えた手をおろし、余韻に浸るかのようにその場に佇んだ。

 樋口さんのこと、知ることができてよかった。
 多分、彼女のことを知らなかったら、ただの嫉妬で終わっていたと思うから。
 今日、この場所に来ることができてよかった。

 あれ? でもそもそもこの場所に来たのって……――。

「芽衣」

 と、そこへ、ふわりと風が舞い上がる。
 この声は――。

 振り返ったときそこにいたのは……さっきいなくなったはずのエージ先輩だった。

 
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