太陽みたいなキミだから
「え、エージ先輩! 今までどこに行ってたんですか」

 もう帰ったと思ったのに。
 エージ先輩はなぜか得意そうにふふんと笑って見せた。

「邪魔かなぁと思って陰からこっそり見てたよ。で、どうだった?」

「どうだった、って……」

 どこか含みのある言い方。なにか言いたげな笑み。
 そうだ、もとはと言えば、先輩がわたしをこの場所に連れてきたんだ。もしかして、樋口さんが来るとわかっててここに誘った……?
 ……不思議。ゲーセンのことといい、樋口さんのことといい、エージ先輩はなんでも見透かしているみたいだ。

「わたしが樋口さんの真似をできるかっていうと話はまた別だけど……でも、彼女と話せてよかったです」

「よかった」

 柔らかい西日が先輩の右頬を照らす。その優しい笑みを見ていると、胸がぎゅっとなってなんだか泣きそうになる。
 なんで、そんなによくしてくれるんですか?
 なんで、わたしのことに一生懸命になってくれるの?
 
「……じゃ、図書館にでも行こうか」

「え……」
 
 呆気にとられるわたしの手元に向かって、エージ先輩が指をさす。

「そのカバン、ものすごーく重そうだけど、どうせ塾の宿題が入ってるんでしょ?」

「えっ、な、なんで、それを……」

 今さら隠したところで無駄だとわかっているけど、わたしは慌ててバッグを両腕に抱えた。
 エージ先輩の言う通り、先輩と別れたあとに図書館にでも寄って、塾の宿題をやってしまおうと思っていたのだ。
 そんなことまでお見通しだなんて。

「オレ、勉強見るって言ったじゃん」

 先輩は楽しそうにニッと笑った。
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