太陽みたいなキミだから
 瞬間、目の前が真っ暗になった。
 ――喜んでくれなかった。やっぱりだめだった。

「でも……前より上がってるよ?」

「簡単なところでミスしてるじゃない。気が抜けてる証拠よ」

 わたしが珍しく口答えしたのが気にくわなかったのか、お母さんの口調が荒くなる。

「お兄ちゃんはこんなミスしなかったわよ。あなたちゃんと見直ししたの?」

「した……よ」

「不十分なのよ。お兄ちゃんはね、時間ギリギリまで見直ししていたらしいわよ? まぁ、あの子は見直しがなくても満点しかとらなかったけれど。お兄ちゃんのかしこさが、あなたにもうちょっとあったらよかったのに――」

 お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん――。
 お母さんは、結局お兄ちゃんのことしか興味ない。いつまでも過去のお兄ちゃんにこだわっているんだ。

 喜んでもらえると思っていた。
 わたしの顔をまっすぐ見て、笑顔で「芽衣、すごいわね」って。「今夜はごちそうね」って。
 でも……わたしの思い上がりだったみたい。
 お母さんはやっぱりお母さんだ。わたしのことなんて一ミリも見る気がないんだ。
 わたしなんて……わたしなんて……。

 キーン、と耳鳴りがする。お母さんがまだなにか言っているけど、もうなにも聞こえなかった。
 世界がどんどん色あせていく。エージ先輩のおかげで色を取り戻していた、世界が――。

 気づいたら、お母さんに背中を向け走り出していた。
 苦しくて、悲しくて。この胸の痛みをどうにかしたくて無我夢中で走った。
 




 この色あせた世界で、わたしが生きている意味ってある?
 
 
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