太陽みたいなキミだから
 学校内はがらんとしていた。
 とっくに下校時刻が過ぎているから、当たり前だけど。この様子だとエージ先輩もきっといない。
 それでもわたしは、屋上に向かってひた走る。
 もう、ぜんぶどうでもよかった。

 ドアを開ける。にび色の重たい雲がこちらにまで迫ってきている。そんな天気の中、エージ先輩は……いた。

「芽衣、どうしたの? 顔色が悪いよ」

 先輩はわたしの気配にすぐに気づき、心配そうに寄ってきた。
 だけどわたしはそんな先輩を見ることもなく、そのまままっすぐフェンスに向かう。
 一番右端から四つ目のフェンス。それは、壊れていて危ないとされるフェンスだった。
 
 そうだ、最初からこうしていればよかったんだ。
 あのとき、エージ先輩に引き留められなければ、こんな思いをしなくてすんだのに。無駄に頑張って、無駄に悲しい思いをした。
 わたしはやっぱり誰からも必要とされないんだ。

「芽衣!」

 勘のいいエージ先輩は、わたしがなにをしようとしているのかわかったみたいだ。
 すぐに隣までやってきて声を荒げる。だけど……――。

 わたしはキッと先輩を睨んだ。
 先輩はいつだって、声はかけるくせに触れようとはしない。
 今もわたしの腕を引っ張って無理やりにでもフェンスから離そうとすればいいのに、しない。
 エージ先輩だって、別にわたしのことを本気で心配しているわけじゃない。

「危ないよ、芽衣」

「わたしなんかいない方がいいんだ」

 口から飛び出た言葉は、自分で言ったとは思えないほど冷たく響いた。

 
 
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