太陽みたいなキミだから
 気まずそうにしている部長が可笑しくって、思わずクスッと笑ってしまう。

「保健の先生の話では、杉咲、熱があるみたいだって」

 熱……。全然気づかなかった。頭が重かったのはそのせいか……。 
 ――そういえば。

「あの、誰か……いませんでしたか?」

 あの場所にはエージ先輩がいたはず。なんでエージ先輩じゃなくて部長が運んでくれたんだろう。
 だけどわたしの問いかけに部長は不思議そうな顔をして

「いや、杉咲しかいなかったけど」

と言った。

 部長が来たときにはエージ先輩はもういなかった?
 もしかしたら、わたしがあまりにも理不尽でひどいことを言ったから、怒って帰ったのかもしれない。
 最後に見た先輩の表情を思い出し、胸が痛んだ。

「――あんまり無茶するなよ、見てられない」

 部長がわたしを心配そうに見つめている。
 辞めた部員のことをそこまで心配してくれるなんて、やっぱり部長は責任感が人一倍強い。
 わたしはフッと息を吐いた。

「辞めた部員のことをそんなに心配しなくていいですよ」

「杉咲、わかってないみたいだから言うけど、みんな杉咲のこと心配してるからな。もちろん、オレだって」

「え……」

「お願いだから『みんな敵』みたいな顔するなよ。杉咲のことを見てるやつだって、ちゃんといるから」

 まっすぐな、射るような瞳。部長にこんな風に見つめられたことがなかったから、ドギマギする。

「……とにかく、早く元気になれよ。オレはずっと待ってるから」

 部長はわたしの頭をぐしゃっと撫でて、出て行ってしまった。

 『みんな敵みたいな顔』って……わたし、そんな顔してた? みんなわたしのことを心配してるって……本当に?
 心の中がぐちゃぐちゃで、もうよくわからない。
 ただ今は……エージ先輩に会いたい。会って話をしたい。

 先輩、今どこにいるの?
 
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