太陽みたいなキミだから
どろどろとしたものが、胸の奥から込み上げてくる。
――わたし、なんのために生きてるんだろう。
一度そう思ったらどんどん惨めになってきて。悔しくて、悲しくて。
……あ、ダメだ。吐きそう。
フェンスに思い切りもたれかかって堪える。はるか彼方にあるはずの地上が、ぐんと近づいた感覚になった。
このまま……このまま落ちてしまったら楽になるのかな。
そう、なにも「死」はそれほど特別なことじゃない。五年前だってここから飛び降りた生徒がいたみたいだし、去年だって病気で亡くなった生徒がいた。紗枝たちとその人のために折り鶴を折ったことも覚えている。
「死」はどこにである、ありふれたふつうのこと。今さらわたし一人いなくなったところで、別に――。
「――おーい」
その時、天から声が聞こえてきてハッとした。でもここは屋上だ……ありえない。
もしかして、天使?
その割には声の調子が軽すぎる。
虚ろな目で見上げると、目が覚めるようなオレンジ色が目に入った。
それはまるで、太陽みたいな……――。
「あ、なんだ。フツーに体調悪い?」
ピントが合った瞬間わたしの目の前に現れたのは、太陽でもなく天使でもなく、紛れもなく人間の男の人だった。
「……っ!?」
驚いてよろけた拍子に尻もちをついた。
腕があたって、フェンスがガチャンと音を鳴らす。
だって、わたしの他に人がいるなんて、思ってもみなかったから。
ううん、ドアを開けた時は確実に誰もいなかったはずなんだ。
じゃあこの人は一体どこから現れたんだろう?
「ここ、オレのお気に入りの場所なんだよね。もし君が自殺でもしようもんなら、止めなきゃと思って――……って、大丈夫?」
早口に喋っていた彼は、最後に取ってつけたように「大丈夫?」と言った。
その割に手を差し伸べてこないところを見ると、わたしのことを心配しているのかしていないのか、よくわからない。
ラフに着崩した冬服用の長袖シャツ。綺麗に染まったオレンジの髪。いたずらっぽいアーモンド型の目。真っ白い肌。
こんな目立つ人、うちの学校にいたっけ。
って言っても八クラスもあるマンモス校だから、知らなくても無理はないかもしれないけど。
いつの間にか吐き気はおさまっていた。
こくんと頷くと、彼は「そっか、よかった」と言って笑った。
笑うと小さな八重歯が見えて、まるで子犬みたいだと思った。
――わたし、なんのために生きてるんだろう。
一度そう思ったらどんどん惨めになってきて。悔しくて、悲しくて。
……あ、ダメだ。吐きそう。
フェンスに思い切りもたれかかって堪える。はるか彼方にあるはずの地上が、ぐんと近づいた感覚になった。
このまま……このまま落ちてしまったら楽になるのかな。
そう、なにも「死」はそれほど特別なことじゃない。五年前だってここから飛び降りた生徒がいたみたいだし、去年だって病気で亡くなった生徒がいた。紗枝たちとその人のために折り鶴を折ったことも覚えている。
「死」はどこにである、ありふれたふつうのこと。今さらわたし一人いなくなったところで、別に――。
「――おーい」
その時、天から声が聞こえてきてハッとした。でもここは屋上だ……ありえない。
もしかして、天使?
その割には声の調子が軽すぎる。
虚ろな目で見上げると、目が覚めるようなオレンジ色が目に入った。
それはまるで、太陽みたいな……――。
「あ、なんだ。フツーに体調悪い?」
ピントが合った瞬間わたしの目の前に現れたのは、太陽でもなく天使でもなく、紛れもなく人間の男の人だった。
「……っ!?」
驚いてよろけた拍子に尻もちをついた。
腕があたって、フェンスがガチャンと音を鳴らす。
だって、わたしの他に人がいるなんて、思ってもみなかったから。
ううん、ドアを開けた時は確実に誰もいなかったはずなんだ。
じゃあこの人は一体どこから現れたんだろう?
「ここ、オレのお気に入りの場所なんだよね。もし君が自殺でもしようもんなら、止めなきゃと思って――……って、大丈夫?」
早口に喋っていた彼は、最後に取ってつけたように「大丈夫?」と言った。
その割に手を差し伸べてこないところを見ると、わたしのことを心配しているのかしていないのか、よくわからない。
ラフに着崩した冬服用の長袖シャツ。綺麗に染まったオレンジの髪。いたずらっぽいアーモンド型の目。真っ白い肌。
こんな目立つ人、うちの学校にいたっけ。
って言っても八クラスもあるマンモス校だから、知らなくても無理はないかもしれないけど。
いつの間にか吐き気はおさまっていた。
こくんと頷くと、彼は「そっか、よかった」と言って笑った。
笑うと小さな八重歯が見えて、まるで子犬みたいだと思った。