太陽みたいなキミだから
 わたしも今は、黙々と作業するのが苦ではなかった。
 先輩に会えない焦りをごまかすことができるから。それに、お母さんとのことも悩まなくて済む。

 あの日、家に戻ったとき。お母さんは、まるでなにごともなかったかのように、いたってふつうだった。
 わたしを見て心配するでも、怒るでも、ましてや「ごめんね」と謝るでもない。
 本当に『なにごともなかった』のだと錯覚しそうになる。
 そしてわたしも、そんなお母さんに向かっていく気力はなかった。
 かといって死ぬ勇気も本当は……ない。
 宙ぶらりんのまま、ただ毎日を過ごしている。結局わたしは弱虫だ。

 ――あ。
 引き寄せた紙に『美術部』の文字。そうか、美術部は今年も展示をするんだ。

 そういえば、あれは去年の今頃のことだった。
 文化祭で展示するための絵とコンクールの絵の締め切りが運悪く重なってしまって、先輩たちに泣きつきながらもなんとか両方完成させたんだ。
 ――もうわたしには、関係ないけど……。

 わたしはパソコンに素早く「展示」と入力して、紙を無造作に投げた。
 それに気づいた樋口さんが、几帳面に紙を正す。

「…………」

 先日、樋口さんと話して以来の二人きり。わたしたちの距離が縮まったかというと、そんなこともなく……。
 樋口さんは必要以上にわたしと話そうとはしない。怒ってる……わけじゃなさそうだけど。

「言えたの」

 作業する樋口さんをじっと見つめていたら、とつぜん口が動いた。
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