太陽みたいなキミだから
『綺麗なオレンジ色したひまわりだ』

『オレは芽衣に興味があるよ』

『色使いが生き生きとしてて、生命力に溢れてて』

『芽衣ががんばったからだよ。えらいね』

 初めてだった。
 わたしの描いた絵を褒められたのは。
 初めてだった。
 わたしを知りたいと思ってもらえたのは。

 初めてだったんだ……。

 誰からも必要とされないわたしに、寄り添って、話を聞いてくれた人。
 わたしを『いいね』って言ってくれる人……それは、エージ先輩だ。
 
 先輩に会いたい。
 会って「ごめんね」と「ありがとう」を伝えたい。
 エージ先輩のことを考えると、胸のあたりがぎゅっと切なくなって、それからホッと温かくなる。

 そっか、わたし……泣きなくなるほど、先輩のことが好きなんだ――。
 
「あ……」

「えっ」

 樋口さんが優しい顔で窓の外を見ていた。
 わたしもつられて外を見る。するとそこには……。

「虹……!」

 長い長い雨が上がって、空には七色の虹がかかっていた。
 それはまるで、新しい世界への入り口のようで。

「樋口さん、そんな顔もするんだね。可愛い」

 夢見る少女のような瞳で虹を見ている樋口さんに声をかけた。
 すると樋口さんは「え゛」という声にならない声を上げ、みるみるうちに赤くなる。

「や、やっぱり怖い、のかな……わたしって」

 その様子がいつもとちがって可愛くて、なんだか樋口さんともっと仲良くなれる予感がした。

 ――芽衣から歩み寄られて嫌な子はいないと思うけどな。

 わたしは、エージ先輩の言葉をやっぱり思い出していた。




< 63 / 95 >

この作品をシェア

pagetop