太陽みたいなキミだから

9. 花火と嘘

 ――なんだかドキドキする。

 もうすっかり暗くなった夜道を走る。
 ショーウィンドウに貼られたポスターには、大きな花火の写真とともに『花火大会』の文字が並んでいた。

 『芽衣、一緒に花火に行こう』とエージ先輩に誘われたのが終業式の日。
 塾の夏期講習だからと断ろうとしたわたしに、その帰りに学校でなら会えるねと提案してくれたんだ。
 お母さんには塾に残るから少し遅くなると言っておいたから、きっと大丈夫だと思う。
 たった三十分だけど、エージ先輩と花火を見れるんだ。
 そう思うとドキドキがとまらなかった。

 ――カラン、コロン。

 向こうから女の子たちが歩いてくる。
 きっと直接会場に行くんだろう。
 華やかな色合いの浴衣姿が夜道を明るく照らしている。

 浴衣……。
 わたしは、自分の着ている制服をじっと見る。
 わたしだって、せっかくなら浴衣を着たかった。こんなんじゃいつもと同じで代わり映えしない。
 エージ先輩は……浴衣かな。いつも制服姿だからうまく想像できないけど。

 遅くなっちゃったな……。
 チラ、と腕時計で確認する。もうそろそろ花火大会が始まる時間だ。
 先輩はもう学校に来ているだろうか。
 そもそも夏休み中で学校に入れないのに、どこで見るつもりなんだろう。

 疑問は尽きないけど気にしない。
 先輩と夏休み中に会える! それだけでなにより嬉しかった。

「こっちだよ」

 学校の門の前に、先輩はいた。笑顔でこっちに手を振っている。
 やっぱり制服姿だ。

「遅くなっちゃって……すみません」

「全然! もうそろそろ来ると思ってたし」

 久しぶりに先輩に会えて、心が弾んでいるのがわかる。
 わたし、浮かれてる……かも。

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