太陽みたいなキミだから
「わ……ぁ」

 花火を最後に見たのは五年前。まだ高校生だったお兄ちゃんと、お母さんと三人で。
 家の窓から見える小さな小さな花火だったけど、一つ、また一つと打ち上がるたびに、感動の声を漏らした。
 あの頃はまだ楽しかった。
 それが、お兄ちゃんが海外に行って、お母さんがわたしにお兄ちゃんの代わりをさせようとしてから、わたしは自分の気持ちが言えなくなった。
 もっとわたしを見て! 必要として! って自分の気持ちを無視してきたんだ。

 ――ドンッ……ドンッ……。

 赤、青、ピンク……次々と上がる花火に、目が離せない。
 上がるまでのワクワク感、パッと花開く瞬間、遠くまで鳴り響く音。
 この臨場感を、わたしだったらどう描こう。キャンバスに何色をのせよう。
 するい、先輩はするい。こんなの見せられたら、やっぱり描きたいと思ってしまう。
 この胸のときめきは、どうやったって抑えられそうもない。
 
「ふっ」

 すぐ隣で笑い声がした。

「ね、芽衣の心は正直だ。描きたいんでしょ?」

 エージ先輩が優しく微笑んでいる。
 今までで一番、うれしそうな顔。
 先輩は最初からわかっていたんだ、わたしの本当の気持ち。きっと、初めて会ったあの瞬間から。

「でも……」

 ただでさえ『必要とされていない』のだ。
 絵を描きたいなんて言ったら、今度こそ見放されてしまう。それがすごく、怖い……。

「人生はたった一度しかないんだよ。好きなことを、好きなようにやってほしい。後悔してほしくないんだ。せっかく今芽衣は生きて……絵を描けるっていうのに」
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