太陽みたいなキミだから
 それって……どういう意味――?
 意味深なセリフにエージ先輩をじっと見るけど、先輩はただ微笑むだけだ。

「誰かのために生きなくていいよ。芽衣は芽衣の人生を歩んでいいんだよ」
 
 パラパラパラ……と花火が散る。
 その最後のきらめきの中に、エージ先輩がいた。

 ――わたしの人生を……。

 才能はないかもしれないけど、それでも絵が好きで、絵を勉強したいと思った。いろんな感情を筆にのせて描きたいと思った。
 大切だった。わたしの中で芽生えたこの気持ち……大切に、したかった。
 今からでも間に合うのかな。一度は破り捨てたあの絵を、もう一度かき集めてもいいのかな……。
  
「わたし……もう一度絵を描いてもいいのかな……」

 小さくぼそりと言った言葉。
 花火の音でかき消されて聞こえないはずだった。だけど――。

 ふっと優しく微笑むエージ先輩を見たら、それが答えだとわかった。

 もう一度、絵を描く。今度は誰に反対されようとも、めげないで描き続けたい。
 それがわたしらしく生きるってことだと思うから。

「今日、芽衣と花火を見れてよかった。うれしいな……夢みたいだ」

 遠くを見てひとりごとのようにつぶやく先輩の姿を見たら、なんでだろう、ドキッとする。
 そんな最後みたいな言葉を言わないで。

「……来年も、また一緒に見ましょう」

 エージ先輩と二人で。たしかに先輩は卒業しちゃうけど、今度はわたしが屋上まで案内するから。
 だから……そんな悲しい顔をしないでほしい。

「うん、また……来年」

 だけどエージ先輩は、そう言ってまた寂しそうに微笑むのだった。
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