太陽みたいなキミだから
「もしかして……体調がよくないんですか? なんだかちょっと……――」

 いつもとちがうような。

「オレ……」

 エージ先輩がなにか言おうとした、そのとき。

 ――ピンポンパンポン。文化祭実行委員は集まってください。繰り返します。文化祭実行委員は――。

 大音量で響く放送にハッとした。

「いけない、行かなくちゃ! 樋口さんに怒られちゃう」

 楽しい時間はあっという間で、委員の集合時間が迫っていたことに気づかなかった。
 もうちょっと話していたいけど……。

 名残惜しい気持ちで先輩を見ると、先輩の茶色い瞳の奥が悲しげに揺れていた。
 先輩、なにか言いたいことがあるんですよね?
 言いかけた言葉の続きが知りたいけど、
 
「……じゃあ、またあとで」

 そんな風に手を振られたら、もう行くしかなくなってしまう。
 わたしは名残惜しい気持ちで屋上をあとにした。




「……遅いっ」

 教室のドアを開けると、樋口さんが仁王立ちでわたしを出迎えた。
 眉を逆八の字にして明らかに怒っている。

「ごめん! ……あれ? ほかの人たちは?」

 ひょい、と樋口さんの肩越しに中を覗くが、樋口さんのほかに文化祭実行委員の人たちはいない。

「杉咲さんが遅いからみんな先に行ったの」

「えっ、もしかして樋口さん、わたしを待っててくれたの⁉」

 うれしくて近づいたら、樋口さんはふいっと顔を背けてしまった。

「そういうわけじゃなくて。わたしと杉咲さん、ペアで動くことになっているから、仕方なく」

 口ではそう言っているけど、ほんのり耳が赤くなっている。
 可愛いところがあるんだよなぁ。



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