太陽みたいなキミだから
「じゃあ、さっそく行きますか」

 教卓に置いてあるバインダーを手に取り、廊下を進む。
 この時間は文化祭準備の最終チェックをする時間だ。
 ちゃんと事前に提出した用紙の通りに準備を終えられているか、不足しているものはないか確認していく。
 わたしと樋口さんは二階の教室を一つ一つまわって、次が最後の教室だった。

「次はここ、と――」

 そこは、美術部が展示をする教室だった。
 あ……片桐部長は相変わらずアーティスティックな彫刻をつくったんだ。
 可愛いアクセサリーに、個性的な版画、陶磁器でつくった花瓶など、部員たちの多種多様な展示物がびっしり並んでいる。

 ……不思議だな。こうやって部員の作品を見ても、前ほどいやな気持ちにならない。
 前は、『もう絵は描かない』って思っていたから、目にするのもいやだったんだと思う。
 でも今は……。

「悪い悪い!」

 ガラリとドアが開いて、片桐部長が入ってきた。

「ちょっと人に呼び止められて……っと、最終チェック、だったよな?」

 部長は足早に教室に入ってくると、わたしと樋口さんを見てニカッと笑った。
 見慣れたわたしとはちがって、その大きさに、樋口さんが呆気に取られているのがわかる。

「……え、あ、はい。とは言っても、美術部は展示なので……そこまで確認はないんですけど。まず、入り口は一か所……教室の前方ですね? それと……――」

 そうはいってもさすが樋口さん。驚いていたのは最初だけで、すぐにテキパキと仕事をしだした。
 手持無沙汰になったわたしは、実行委員の仕事は樋口さんに任せて、じっくり展示物を見ることにした。
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