太陽みたいなキミだから
 どの作品も力が入っていることがわかる。
 特に三年生は最後の展示だからか、いつもよりダイナミックな作品が多かった。

 ……ここに。

 一か所だけ空いたスペースの壁に、そっと指をはわせる。
 ここにわたしの作品も飾れたらよかったのに。
 来年は絶対に飾る。そして先輩に見に来てもらうんだ。先輩はきっと、とても喜んでくれるはず。
 目標をかかげたら、いてもたってもいられずに、今すぐにでも描きたくなってきた。
 そういえば画材の入ったカバンを屋上に忘れてきてしまったし、今日このあと、残って描いてみようか……――。
 
「杉咲……忙しそうだな」

 いつの間にか片桐部長が隣に来ていた。

「え……あれ? 樋口さんは?」

 きょろ……とあたりを見回すけど、樋口さんの姿はない。

「あの子なら『先に帰る』って言ってたぞ。杉咲が真剣に見てるから遠慮したんだろ」

 そう……かなぁ。効率重視の樋口さんのことだから、ただ単に仕事が終わってわたしを置いていっただけだと思う。
 あとで「もたもたしないで」と怒られそうだ。
 わたしはふふっと笑った。

「……本当ならここに、杉咲の絵も飾りたかったんだけど……」

 部長がチラ、と申し訳なさそうにわたしを見た。気を遣ってくれているんだ。
 わたしはそんな部長に向き直った。

「部長、わたし……もう一度絵を描こうと思って。お母さんには反対されると思うけど、ちゃんとぶつかってみようって思うんです。だからその時は……美術部に戻ってきてもいいですか?」

 ごまかして、逃げてきた。でももう、逃げない。
 そう決意したわたしの視界は、もうモノクロじゃなかった。

 片桐部長が目を大きく見開く。

「なんだか変わったな、杉咲。前はどこか怖がっているように見えたけど……今はなんていうか、自信に満ちているきがする。誰かのおかげ……なのか?」
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