太陽みたいなキミだから
 そう聞かれ、まっさきに浮かんだのはエージ先輩の顔だった。
 小さくコクリと頷くと、片桐部長は宙を見て「そうか……」と呟く。

「じゃあ、そいつのこと大事にしないとな」

 再びわたしにニカッと笑顔を向ける。
 大事にしたい。先輩も、この気持ちも。

 ……そういえば。
 今までエージ先輩のことを誰かに聞いたことはなかったけど……片桐部長なら同じ三年生だし、なにか知っているかもしれない。
 エージ先輩はいつも「ひみつ」ばかりで自分のことをぜんぜん教えてくれないから。
 何組? 部活は? なにが好き? なんでもいいから彼のことを知りたかった。

「あの――」
「片桐!」

 わたしが口を開いたのと、部長が誰かに呼ばれたのはほぼ同時だった。
 振り返ると、教室の入り口から男の人が顔を覗かせていた。
 部長を呼び捨てにするからきっと三年生だろう。わたしたちを見るなり「じゃました?」なんてニヤニヤして。
 片桐部長は大人だから、そんな悪ノリには乗らないけど。

「どうした?」

「ああ、いや、さ。今度の試合、また片桐に頼みたいんだよね」

「いや、もういいって。一年を使ってやれよ」

「そこをなんとか頼むよ~! あいつらまだ使える状態じゃないんだって」

 すぐ終わる話かと思ったら、わりと立て込んでそうだ。
 話の内容からするに、助っ人のお願いらしい。

 男の人は「な、な、頼んだぞ?」と何度も部長の肩を叩いて、そのまま返事を待たずにどこかに行ってしまった。
 部長も大変そうだな……。
 わたしのそんな視線に気づいたのか、片桐部長は「あいつ、サッカー部の部長でさ」と困ったように笑った。
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