太陽みたいなキミだから
「…………っ」

 わたしが絵を描いている間にも、エージ先輩はどんどん透明になっていた。
 うしろの銀色のフェンスまで、先輩の体を通してハッキリわかる。
 もう本当に時間がない。

「いやだ、行かないで……」

 わたしの口から飛び出た意味のない言葉は、ぼとりとアスファルトの地面に落ちる。
 ――行かないで。
 わかってる、そんなことムリだって。本当だったら出会ってすらいない人なんだから。
 こうして話していることが奇跡なんだって……わかってる。




 でも……行かないで。





「芽衣……芽衣は、オレにとって太陽だったよ」

 うつむくわたしに、エージ先輩の優しい声が降ってくる。

「そんなこと、ない……! 先輩が、先輩こそ、わたしの――」
「芽衣」

 そのとき、ふわりと風が舞う。
 エージ先輩がふいに、わたしのおでこにキスをしたのだ。
 触れないけど、それは、とてもとても優しいキスだった。
 
 月が昇る。小さな星が瞬いている。
 きらきら、きらきら、エージ先輩のオレンジの髪も、白い肌も、光り輝いていた。
 ああ、やっぱり先輩はきれいだな。

「……せ、ん、ぱ……い」
 






 ――わたしの小さな叫び声は、どこまでも遠く、深い夜空に吸い込まれていった。

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