太陽みたいなキミだから

12. 太陽みたいなキミへ

 どうして朝はやってくるんだろう。

 目覚めて、窓から差し込む光を見たときの、絶望。
 あのまま時が止まったところで、どうしようもないのはわかっている。
 ただ、わたしだけが次の日を迎えたことが、悲しかった。

 もっと早く知っていればなにか変わったのかな。
 もっと早く、先輩がいなくなることがわかっていたら……。
 ……きっとなにも変わらない。
 わたしは怒って、嘆いて、わめいて、先輩を困らせるだけ。
 だったら最後まで楽しい時間が続いたことを、よかったと思うべきなのかもしれない。

「ねぇ、ねぇ、どこまわるー?」

「やっぱさー、家庭科部のクレープは食べるっしょ! あとはー……あ、これしたい! 占い!」

「あー、紗枝、彼氏との相性気になるもんね?」

「やだーっ、美優だってアイツとの恋愛運占いたいでしょ~? ね、芽衣もそう思わない?」

 わたしも会話に入っていることに気づいたのは、とつぜん名前を呼ばれたときだった。
 自分の机でぼんやり窓の外を見ていたわたしの近くに、いつの間に紗枝と美優が来ていたのだ。

「え……」

「もーっ、芽衣ぜんぜん聞いてない! 実行委員で疲れてるのはわかるけどさぁ、文化祭は楽しもうよ」

「そうそう! 芽衣ももちろん占いするよね?」

 紗枝が頬を膨らませてわたしの腕を引っ張る。

 ……占い。
 今はそんな気分にはなれない。

「……ごめん、やめとく」

 わたしが小さく応えると、紗枝と美優は顔を見合わせた。

「……なんか芽衣さ、最近ノリ悪くない? 全然うちらと話してくれなくなったし」

「そうそう。樋口さん? だっけ? あの変わった子とばっかり話すよねぇ。なんかつまんない」

 ――つまんない。
 そう言われて、なにか硬いもので頭を殴られたみたいな衝撃を受ける。
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