太陽みたいなキミだから
 つまんない。わたしが二人にちょっとでも同調しなかったら『つまんない』んだ。

「……ふ」

 思わず口から息がもれる。
 今までなにをやってきたんだろう。
 この子たちに必要とされたくて、ずっと時間を無駄に過ごしてきたんだ。
 わたしは勢いよく席を立った。ガタッとイスが大きな音をたてる。

「――そうだよ、わたし、つまんないんだ」

 目を丸くする二人をしり目に廊下に飛び出した。人混みの中をかきわけて進む。
 わたしはもう、無理してがんばらなくていいんだ。
 行きたい場所、やりたいこと……わたしが決める。






 ――また、ここに来てしまった。

 抜けるような青空がどこまでも広がる。
 さんさんと降り注ぐ陽光があまりにも眩しくて、わたしは思わず目をつむった。
 ――芽衣。
 先輩の声が、頭の中で反響する。
 もしかして。そう思い目を開けるけど、やっぱりそこには誰もいなかった。

 文化祭でにぎわう校内とちがって、屋上は驚くほど静かだ。静かで、そして、さみしい。
 見慣れたオレンジ頭が見えないから、余計に。
 来るんじゃなかった。
 もういないとわかっていても、どうしても足がここに向いてしまう。先輩のいた形跡が残ってないか、探してしまう。
 なんでもいい。そのオレンジの髪の毛一本でもいいんだ。
 彼がたしかにここにいたってことを、感じたい。

 少しでも空に近づきたくて、わたしは階段室の上に上がることにした。
 こんなところのぼっていいのかな、なんて思っていたころが懐かしい。
 思えば、エージ先輩に連れられて見たここでの景色が、すべての始まりだった。
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