太陽みたいなキミだから
「杉咲、なんで黙ってた」

「え……?」

 やっぱりなんのことかわからなくて、小さく首を傾げる。
 部長はじれったそうに「ああもう」とつぶやくと、はしごを素早く上り、わたしの腕をガシッとつかんだ。
 その気迫にたじたじになる。

「部長、どういう――」
「いいから早く!」

 え……えええっ⁉
 よくわからないまま部長に引っ張られ、はしごを下り、階段を下り……あっという間にある教室にたどり着いた。
 そこは、美術部の展示がされている教室だった。

 賑わうほかの教室とはちがい、少しばかり静かな空間。
 廊下に出されている受付には、先輩の女の人が座っていた。
 
「芽衣!」

 わたしを見るなりパァッと目を輝かせ、部長とまったく同じ言葉を放つ。

「なんで黙ってたの⁉」

 すかさず部長が「しぃっ」と人差し指を唇に当てて、先輩が申し訳なさそうに教室の中を見た。

「杉咲、こっち」

 小声の部長が教室の中へと誘う。
 二人とも、なんだっていうんだろう。わたしは美術部の展示になにも関係ないのに……。
 よくわからないまま恐る恐る足を踏み入れる。

 教室の中では、数人のお客さんが作品を見ながらゆったりと過ごしていた。
 部員たちの作品は、昨日見た時となんら変わっていない。
 本当に、なんだっていうの……。
 みんなの作品を見ながら部長のあとをついて歩いていたら……とつぜん部長がピタリと足を止めた。

「なん……――」

 なんなんですか。そう言おうとして、やめた。
 部長の背中越しに信じられないものが見えたからだ。


 そこにあったのは……――ひまわりだ。
 地平線だけ微かに赤く染まった、濃紺の空。そこに咲く、大きなオレンジ色したひまわりの絵が、そこにあった。
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