太陽みたいなキミだから
 わたしはゆっくり、ゆっくり、その絵に近づいていく。
 正面に立ったとき、絵の下に書いてある作者名とタイトルが目についた。
 『杉咲芽衣 きぼう』
 ……わたしの名前だ。

「作品を用意してたなら言ってくれればよかったのに。しかもこんな……力作」

 隣で部長がささやいたけど、わたしは返事をするのも忘れて絵に見入っていた。
 こんな絵を描いた覚えはない。だけど……エージ先輩の仕業だってことはすぐにピンときた。
 だってこの構図はエージ先輩を描いたものと同じだから。大きな明るいひまわりは、エージ先輩そのものだった。

 先輩のいう『プレゼント』ってこのこと?
 でも、一体なんで……――。

「――芽衣」

 そのとき、聞き慣れた声がして、体がビクンと跳ねる。
 そんなわけないと思いながらも振り返ると、そこにはお母さんがいた。
 なんで……わたしに興味ないくせに。
 今まで一度だってこういう催し物に顔を出したことないくせに。

「お母さん……なんで……」

 わたしはうしろの絵を気にしながら尋ねた。
 わたしの名前を見られたら、お母さんになにを言われるかわからない。

「今朝、手紙が届いて。『絶対見に行け。行かないと後悔する』って。差出人不明で普段だったら無視するのに……なぜかしら、無視できなかった」

 手紙……?
 描いた覚えのないひまわりの絵といい、お母さんへの手紙といい、不思議なことが重なる。
 エージ先輩の言っていた『プレゼント』って、もしかして……。

 お母さんはコツ、コツ、とヒールの音を鳴らしながら一歩、また一歩と前に進む。
 その目はまっすぐ、ひまわりの絵に向けられていた。
 その口が「杉咲芽衣」とわたしの名を呼んだとき、ドキッとした。
 見られた――。

 ぎゅっと目をつむる。
 怒られるだろうと、そう思ったのに、お母さんの声は驚くほど柔らかかった。

「……芽衣は、こんな絵を描くのね……」
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