太陽みたいなキミだから
 いま、なんて……?

 目を開けて見えた母の顔は、憑き物が落ちたようにすっきりとした顔だった。

「お母、さん……?」

 お母さんは視線を絵からわたしに向ける。その目はもう、わたしを非難してはいなかった。

「ママね、昔……画家を目指してたの」

「えっ……」

 信じられなくて目を大きく見開く。
 今まで、お母さんは絵に興味がないんだと思っていた。
 『そんな無駄なもの』と言っていたし、むしろ嫌いなんだとばかり……。

 だからそんなこと言われてもとてもじゃないけど信じられない。
 お母さんは、わたしの気持ちがわかるのか、フッと小さく笑みをこぼした。

「うまくいかなくてね……才能がなかったの。この世界は憧れだけでどうにかできるほど甘くないなって痛感したわ。だから……芽衣が絵を好きなのはわかっていたけど……同じ道を歩ませたくはなかったのよ。パパの仕事を継げば幸せになれると思っていたの」

 知らなかった。そんな風に思っていたなんて。
 わたしたちには会話が足りなかったのかもしれない。もっと話し合えていたら、ここまで拗れなかったんじゃないかと、今なら思う。

「でも……そうじゃないのね」

 お母さんはもう一度ひまわりの絵を見た。その目はとても眩しそうに細められている。
 
 エージ先輩。
 エージ先輩のくれた、このチャンス……わたし、絶対に無駄にしません。

 わたしはぎゅっとこぶしを握り、すうっと息を吸い込んだ。

「お母さん!」

 目をしっかり見て。
 必要とされたいとか、わたしを見てほしいとか、そんなので自分の気持ちを偽るのはもうやめた。
 


「――絵を、描きたいです」


 わたしはわたしの人生を、生きる。

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