イケメンの人気者と、ぼっちな私の秘めごと
 湊をおいて、猛ダッシュ。
 私は必死に走ってるのに、後ろをふり向けば余裕そうに走って着いてくる湊の姿が。

 ムッとなってしまい、意地の張り合いでそのまま無言で走り続ける。気づけば、私の家に着いていた。


「はぁっ、はぁはぁっ」

「おー、もう家に着いたじゃん」

「たっ体力お化け……!」

「こちとら、スポーツやってるんでね」


 くっ、帰宅部で悪かったわね。
 言い返したいけど、圧倒的に肺に酸素が足りない。荒い呼吸が整うまで、湊は無言で待ってくれた。


「ふぅ……、じゃ、じゃあ私帰るね。湊も、気をつけて帰りなよ」


 そう言って、そっと玄関を開ける。


「ん。おやすみ、那央。また学校でな」


 学校では今まで通りだって言ったのに。
 懲りない湊。でも、そんなところも可愛いと思ってしまうのは惚れた弱みかな。


「た、たまになら、屋上とかで一緒にお昼食べてもいいよ」

「……マジ? あ、おい!」


 さっと玄関扉開けて中に入り、少しだけ開けてから外にいる湊を見る。


「……マジだよ。おやすみ、湊」


 パタン、と玄関を閉める。
 外で何かを言っている声がするけれど、小さくてよく聞こえない。
 しばらくすると湊も帰ったのか、声がしなくなった。


 忍足で部屋に戻って、私はベッドにダイブする。
 

「なんだか、色々ありすぎて頭の中がごちゃごちゃだ……」




  私と湊だけの、秘密。
 ……まぁ、矢野先生にはバレちゃったけれど。


 午前零時。
 滅多に使われない準備室の窓から、夜の校舎に侵入して。
 二人で怪談を検証する。


 ──ねぇ、湊は知らなかったと思うけど一つだけジンクスがあるんだよ。

 夜の学校で、好きな人を自分の席に座らせるとその恋は実る。
 いつからあるジンクスなのかは、わからない。
 私たちと同じように、夜の学校に忍び込んでいた先輩たちがいたのかもね。




 検証結果──、恋は実る。



 これは私と湊、二人だけの青い夏の秘めごとだ。
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