イケメンの人気者と、ぼっちな私の秘めごと
 雲の切れ間からもれた月明かりが、湊の金髪をキラキラと輝かせる。
 校則違反の金髪。でも湊の透き通るような白い肌によく似合っている。
 切れ長の瞳も、鼻筋も、整った薄い唇も。
 
 全部が作り物のように綺麗で、眩しい。


「ごめんってば、那央」

「……許す」

「ありがとうごさいまーす」


 鍵を開ければ、湊は軽々と窓枠を超えて中に入って来た。
 身体能力まで高い。解せぬ。


◆◆◆◆◆

 私と湊は普段、学校で話すことはほぼない。
 クラスも違うし、いわゆる陽キャグループの湊と陰キャな私じゃ、きっと卒業まで交わることはなかったと思う。
 

 ──でもその関係は、午前零時の校舎内だけ違うのだ。


「湊、ちゃんと持ってきたの?」

「おう。こっくりさん用の紙と、十円玉──あ」

「まさか湊っ……!」

「いや、待て。えっと確かここに……あった。危ねぇ……ポケットに、今日の昼飯のお釣り入っててよかった」

「本気で忘れてたら、湊の髪の毛十本抜くところだった。よかったね、湊」

「よくねぇ。やめろよマジで! 将来、禿げたらどうすんだ」

「湊の将来なんて、私に関係ないしー」


 頭が寂しくなった湊を想像して、おかしくなってきてしまった。
 でもここで笑ったら怒るだろうから、くるりと方向転換して湊の顔を見ないようにする。

 それでも思い出すと笑いそうになるため、違うことを脳内に浮かべることにした。



 ──私達は、夜の学校に忍び込んで七不思議や怪談を検証する『仲間』だ。
 走る人体模型、プールにひそむナニカ、トイレの花子さん、音楽室の絵画……。
 春先から何度か学校に忍び込んでいるけれど、いまだ何も成果は得られていない。
 

 たまたまお互い怪談話が好きだとわかったあの日。湊に誘われるまま忍び込んだ夜の校舎は、とってもスリリングでワクワクしたものだ。

 と言っても、もし先生達に見つかったらこっぴどく叱られるリスキーな遊び。
 それすら妙な興奮に繋がってしまい、私たちはやめられずにいた。

 今日も今日とて何度目かの、夜の校舎。
 今夜はこっくりさんをやりに来たのだ。
 ……危うく湊のせいで、計画が頓挫(とんざ)するところだったけれど。
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