イケメンの人気者と、ぼっちな私の秘めごと
◆◆◆◆◆

 呪われたかも、と恐怖したのは一瞬で。
 結局、十円玉を動かしていたのは湊らしく、そして紙は何文字が抜けていたりと不完全なものだったらしい。
 それでも気になるならと、後日お寺に二人でお焚き上げに行こうという話になった。

 とりあえずは一安心……だよね?


「気をつけて帰れよー」

「はい。さようなら、矢野先生」

「またな矢野セン」


 そして矢野先生は今回のことに目をつぶってくれるらしく、そのかわり一週間雑用をしろと命じられてしまった。
 それでも寛大な処置だと思う。
 見つかったのが矢野先生で、本当に良かった。




 暗い夜道を二人並んで、帰路に着く。
 いつもなら心地いい無言も、今はちょっぴり居心地が悪いような。
 どくどくと、また心臓がうるさくなってきた。


 こっくりさんが『不完全』なら、私は『不完全燃焼』だ。
 ──だからかな。チャンスは今だと、誰かに囁かれた気がした。


「なぁ、那──っ」


 名前を呼ばれるより先に、湊の制服のネクタイを掴んで自分の方に引っ張った。
 いつもは綺麗な顔も、今は『近すぎて』いい感じにぼやけて見えない。

 熱が、唇に触れる。


「──私も湊が好きって言ったら、どうするっ」


 なんだろう。
 自分でもおかしいくらい、今テンションが上がっているのかもしれない。

 ハイテンション、深夜テンション。
 どうとでも好きなように言ってくれ。



「は、っ?」


 目をこれでもかと見開いて、口も半開き。
 驚きに染めた表情もイケメンなのだから、私の好きな人は世界一かっこいいのかもしれない。


「だから! その、わ、私たちが両想いだったらどうす──」

 
 言い終わる前に口が塞がれた。
 さっきよりもずっと長く、甘い痺れは続く。
 息が苦しくなってきて湊の胸を叩けば、最後に強く吸われて離れていった。

 目と目が合う。
 暗闇の中でも、キラキラ光って見るのは私が恋をしているからなのかな。
 無言で見つめあって数分、いや数秒だったかも。

 湊が柔らかく微笑んだ。
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