白衣の天使は、悪魔の小児外科医から子どもごと溺愛される

悪魔の外科医

――松ヶ丘(まつがおか)総合病院の内部は、腐敗し切っている。

 働いている人間達だけに対する悪逆非道な行いだけなら、私達が耐えれば済むことだ。

 けれど。
患者相手となれば、そうもいかない。

 ――この病院で働き始めてから、八年の時が経つ。
 元々評判の悪かった病院はいつの間にか、地獄としか言いようのない場所に変化していた。

山本(やまもと)先生! 急患です!」
「あー、ごめんね? 三国さん。俺、対応無理だわ」
「山本先生、当直ですよね!? 無理って、なんで!」
「いやー。ストレスが貯まってて~。オペに集中できないからさー。あはは~!」
「笑い事じゃありません……!」

 一体なんのために、当直があると思ってるの!? 
 急患が担ぎ込まれたり、容態が急変したりした時。
 即座に対応できる医者を用意しておくためでしょ!? 

 私は片っ端からスマホを使い、先生達に電話をかける。

 坂神(さかがみ)先生――出ない。
 三屋(さんや)先生――電源が切られてる。
 佐野(さの)先生は研修医だけど、この時間なら仮眠室にいるはず……! 

 私は全速力で病院の廊下を走り、対応可能な先生達を探し回った。

「佐野先生! 手術できますか!?」

 扉を開いて勢いよく叫ぶと、閉じられたカーテンを右へ引き、簡易ベッドに横たわる白衣姿の男性に声をかける。

 佐野先生は26歳の研修医。

 医者としての経験は浅いけど……。
 頼れる人は、この人しかいない! 
 私は寝ぼけている研修医へ、目覚まし時計のような音量で叫んだ。
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