白衣の天使は、悪魔の小児外科医から子どもごと溺愛される

愛しの我が天使(和典)

(張り切りすぎて、無理をさせすぎてしまった)

 仕事中に彼女を攫って事に運んだのは、失敗だった。
 ――そう反省したのは一瞬だ。

(俺の天使……)

 和典の隣で目を閉じ眠る穂波は、天使のように美しい。
 白雪のような肌に、優しい瞳。
 茶髪に染めた髪は華やかで明るい印象を与える。

 和典は茶髪よりも黒髪の方が好みなのだが、大人しく気弱そうに見えるのが気がかりだ。
 心ない医療関係者から加害されて穂波が傷つくのであれば、容姿については目を瞑るしかない。

 彼女の美しさは容姿ではなく、その内面にあるのだから。

(研修医の佐野……。アレは俺の天使を、抱く価値もない女と称した……)

 和典は、穂波と肌を重ね合わせるきっかけを作った男のことを考える。

 ――研修医の佐野。
 彼は自ら身体を差し出した白衣の天使に、一切興味を示さなかった。

(穂波の色香にやられて使い物にならなくなる奴らよりは、利用価値がある……)

 気に食わないことには変わりないが、松ヶ丘総合病院は万年人手不足に喘いでいる。

 愛する天使を妻として迎え入れるには、病院の改革が急務となる。
 猫の手も借りたい状況で、プライベートな好き嫌いなど主張している場合ではない。

(穂波の為なら喜んで、悪魔と呼ばれるに相応しい男となろう)

 そのためには、やらなければならないことが山ほどある。
 和典はベッドサイドに置かれた白衣からスマホを取り出すと、ある人物へ電話をかけた。
< 13 / 43 >

この作品をシェア

pagetop