白衣の天使は、悪魔の小児外科医から子どもごと溺愛される

「ねー。院長にそう呼ばれるのを嫌がってる理由って、ほんとにそれだけ?」

 なんだかんだ言いながら、あの人は彼氏で……。
 姿が見えない時も、久松先生のことを思い浮かべる時間が増えた。
 このまま交際を続けたら、身も心もすべて彼のものになってしまう時が来る。

 そんな予感に戦々恐々としながら、私は思い切ってずっと心の中に引っかかっていたことを同僚へ打ち明けた。

「久松先生って、看護師を取っ替え引っ替えしてたじゃないですか」
「ああ。手術が終わったら抱かせろって迫ってた件?」
「はい。大っぴらに今は誘いをかけていないみたいですけど……」
「そりゃ、三国さんにゾッコンなのは明らかだからね。他の女なんて、眼中にないでしょ」
「裏で関係を持っていたら……。天使呼びを受け入れ、心を許すのは危険のような気がして……」
「心配しすぎでしょ。あの冷酷な悪魔が、三国さんの前では満面の笑みを浮かべて幸せそうなオーラを出すんだよ!?」
「でも……演技かもしれないし……」
「三国さん! ちょっといいかしら?」

 私が悩んでいると、別の同僚に呼び止められた。

 それも、ただの看護師ではない。
 彼女は以前、久松先生に『手術後身体を差し出すように』と何度か誘われていた女性だ。

 私が彼と交際していることは、この病院に勤務する誰もが知っている。
 公然の秘密と化していた。

『あなたみたいなちんちくりんよりも、私の方が久松先生に相応しいわ!』

 最悪の場合はこのように、彼女から喧嘩を売られてもおかしくない。
 私は警戒を怠ることなく、今まで話していた同僚と別れると、別の女性とともに休憩室へ移動する。

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